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三話目 ミカサは心臓を捧げたい
それはエレンがトイレにいたときだった。
ミカサが風のようなすばやさで割り込みをかけてきた。いきなり全速力で入り口から詰め寄ってきた人物がミカサだと気づき、エレンはぞっとした。
反射的に見回した周囲には誰もいない。声をあげるか、遮蔽物の中に隠れるか。ほんのわずかな戸惑いが命取りになった。ミカサは襲撃時もかくやという滑らかな動きで、的確にエレンの背後を取った。
「ミッ、ミカサッ――むぐっ!」
口を押さえつけ、68kgの膂力から繰り出す近接格闘術の威力を使い、エレンをコンマ数秒で個室の中へ引きずり込んだ。
鍵をし、扉をふさぐようにして立つミカサが、やけに恍惚とした表情をしている。
ミカサはやたらに体をすり寄せ、シャツの下の豊艶な胸をぐいぐいと押し付けながら、エレンの耳元に息を吹きかけた。
「エレン、こんなところに私を連れ込むなんて大胆……」
「お前が! お前が今力ひっぱい引きずり込んだんだろ!!」
「とぼけないで……さっき、エレンは私にこう言った……
西の校舎で自主練をする……一人だけで追試でいやになる、って……
あれは私を誘っていた……」
「誘ってねええええええ!」
近頃のミカサはずいぶん吹っ切れて、やたらにエレンを誘ってくるようになった。本当にちょっとの油断が命取りだ。隙を見てはエレンと二人きりになりたがるし、わけの分からない理屈でエレンを襲いたがる。
ミカサはエレンの首に手を回しつつ、片手でYシャツのボタンを外す。ぷちぷちとあらわになっていく開襟シャツの下は生肌で、ミカサは下着をつけていなかった。
ぷくぷくになった勃起乳首をエレンの胸板にすりつけて、ミカサは悲鳴をかみ殺す。
「いひゃぁん……! エレン……言いつけどおり、何もつけてこなかった……」
「何も言いつけてない!!」
「だって……『何かいるものはある?』と聞いたら、『何も』って言った……
余計な飾りのない私を抱きたい、と……」
「お前の解釈力どうなってるんだよ!?」
「エレンはいつも無茶ばかり言う……でも……そんなエレンが好き……もっともっと辱めて……」
「耳がおかしいのか頭がおかしいのかどっちかにしろ!!」
ミカサはご主人様に尻尾を振る犬と同じ澄み切った純粋な目で、頬に満面のとろけた笑みを浮かべ、エレンに真正面からキスをした。
「んんっ……ちゅぅっ……」
唇でエレンを陵辱していく。汁気のしたたる木の実でも押しつぶすようにして、じゅく、と舌が激しい音を立てながらエレンの中にねじこまれ、体から力が抜けそうになる。
ミカサの舌が入ってくると、なぜか立っているのも辛くなってくる。目の前がぐらぐらと煮えてきて、自分がどこにいるのかも忘れそうになった。
妖艶な舌技で無慈悲な陵辱を続けるミカサの、『あなたのためならどんなプレイも辞さないわ』と言わんばかりの(実際言っていたが)熱烈な愛情表現に、何もかもどうでもいいやと投げ出したくなってくる。
散々エレンの唇を味わいつくし、ちゅぽっ、と音を立てて離れたミカサは、理性の砕けた声で熱く囁いた。
「静かにして……誰かに見つかれば、営倉行き……もしかしたら、退校……」
「そ、それは困る……」
「時間もあまりない……手早く済ませよう」
ミカサはエレンのズボンを脱がさず、エレンのモノだけ取り出した。きゅっと逆手に握り締め、指先でかすめるようにしてゆっくりと愛撫する。
ひとかたならぬ熱烈さでちゅっちゅっちゅっと顎にも耳にも頬にもこめかみにもくちづけていき、もはや崇拝の域にすら達しているうっとり顔でエレンのことを注視する。
エレンが持ったのは、もったいねえなぁ、という、ひどく他人事な感想だった。
客観的に見ればミカサは悪くない。クールすぎる物腰で男どものアプローチ未満の接触すら完全に遮断しているものの、遠巻きに眺めるファンは意外と多い。
ただ、エレン自身は一緒にいすぎた期間が長いせいか、どうしてもそういう対象とは考えられないでいた。
(残念すぎる、よなぁ……)
ミカサはチュニックの下に手を這わせると、腹をさかのぼってエレンの乳首をこすりあげた。
びく、と、背筋が驚きと未知の感覚で震える。
「じ、時間ないんじゃないのかよ」
「そう、だから、同時に責める……」
ミカサはエレンを撫でるのをやめて、自分のズボンを解きにかかった。
「私の準備は万端……エレンとこうしてるだけですぐに溶ける……」
膝まで下ろされたズボンの間に、爛熟した媚肉が見えた。閉じ合わせがほころんでいるところに赤く充血した内側の粘膜が覗き、柔らかくひくつきながら透明な体液をつぅっと垂らしている。
ミカサはどう見ても発情しているとしかいいようのない表情で困ったように眉を下げ、エレンの耳元で、はーっ、はーっ、と喘いでいた。乱れた熱い呼吸に、本気で昂ぶっているのだと分かる。
(……すっげぇ、やる気満々)
いつも無表情と冷徹を足したような顔つきでいるミカサも、羞恥と高揚で頬を赤くしていると、別人のように見える。
こんなのはおかしいと思いつつ、容貌にあからさまな欠点のない、すっきりした美しい瞳の少女に欲情まるだしで胸板にすりついてこられると、妙な気分が次第次第に伝染してくるのがわかった。
「あれからずっとエレンにまたしてあげられるのはいつか考えていた……こんなにすぐにチャンスが来るなんて」
ミカサは愛情のこもったくちづけをエレンの首筋に這わせながら、エレンの肉棒を内股ぎみに挟み込んだ。ぬめったぬかるみがてろりとエレンの側面をくわえこみ、傘がミカサの一番柔らかいところにひっかかる。
硬く立ちすぎて安定しない竿を指先で巧みに押さえ込みつつ、ミカサは股でエレンのものを扱きはじめた。
煽るような微弱な刺激がエレンの腰を直撃し、ミカサの舌が鎖骨の上を辿っていくのでさえ倍増しで気持ちよくなってくる。
「しかもこんなところで……少し騒げば見つかってしまうのに……なのに……私は……エレンがこれを望むのだと思うと……感じてきて……しまう……」
エレンはもう何も言えない。相手がミカサだとはいえ、甘い香りのする髪や白い滑らかな肌を盲目的な恋情まみれで密着させてくる女体を前に、なすすべなどあるはずもない。
服をしどけなく解いたミカサの鼻先がエレンの胸襟をすべり、ひたむきにもどかしいくちづけを与えていく。ごく優しい舌使いで、宝石でも扱うように、ゆっくりゆっくりと胸を南下する。
やがてミカサはエレンの乳首を口に含み、しゃぶりながら唾液で溶かしてきた。
口で巧緻のきいたたおやかな刺激を一心にくわえるミカサが、つとエレンを見あげる。黒い濡れた瞳が無言で問いかけてくる。気持ちいいか、と。
エレンは慌てて顔を背け、焼け付きそうになっている頬を手の甲でかばった。こんな顔、見られたくない。とっさにそう思ったからだが、ミカサにはそれで全部バレてしまったらしい。
ミカサはエレンのチュニックに豊かな大胸筋と脂肪でできたおっぱいを押し付け、突端の赤い実をくりゅくりゅと転がしながら、どんどんエキサイトしていく。
「あふっ、ふぁぁっ♥ ……エレン……エレンが好き……」
ミカサはエレンの腰に手を巻きつけて、いとしげにエレンの首筋へ顔を埋めた。しっとりとした艶の流れる黒い髪がエレンの首筋にも鎖骨にも絡まり、ミカサのいやらしい吐息がかかる。
「あの日、私は死んで……エレンのために生まれ変わった……私の人生はあなたのもの……あぁ……エレンが私にこんなことまでさせてくれるなんて……すごく、ゾクゾクする……興奮して……たまらなくなるっ……んぅっ……♥」
ミカサの声がどんどん高みに登りつめていき、エレンのものを挟み込んだ内股のねちゃねちゃがより一層絡み付いてきた。
エレンはため息が漏れそうなのを、すんでのところで我慢した。ミカサの『好き好き攻撃』には謎の伝染力があり、こちらにその気がなくても強制的に気分を高められてしまう。
エレンはすでに精神的に追い詰められつつあった。平静を装いたくて、心にもない罵倒が口をつく。
「……変態……」
ミカサはぞくぞくと背中を仰け反らせて、エレンに縋りつく。目の中に星やらなにやらが飛んでいる。
「いい……! エレン……私は……エレンに苛められると……すごく……気持ちいいっ……」
エレンの横棒を浅く埋没させながら食らい込むミカサの肉襞がぎゅうっと収縮し、大量の粘液を吐き出しながら前後にぬめっていく。頼りなげなその動きが、腰が砕けそうなほど気持ちよかった。
「あぁぁっ……♥ エレン……冷たくても、ここはこんなにアツい……素直じゃないエレンも……好き……大好き……!」
余計に興奮させてしまった。もう迂闊なことは言うまい。
ミカサはエレンの竿を濡れ濡れの貝襞で横ざまに刺激し続けていた。にちゅっ、ぬちゅっ、と、泥まみれの淫猥な音がひっきりなしにするのは、ミカサの泉からあふれ出してとまらないせいだろう。
「エレンは……もっと私に立場を知らしめるべき……私は……エレンのあわれな雌豚だ……だから……恋人になんかしないと……便利なお前が欲しいと……私に……奉仕を強要すればいい……」
ミカサの落ち着いた冷静な声が恋病のようなはしゃぎぶりを加味されて、滔々とエレンの脳に浸透していく。どうかすると洗脳されそうだ。
(こいつはミカサで幼馴染で、家族で……)
ぐるぐると思考が空回りするが、惚けた顔でミカサに擦り寄られると、なぜか瓦解して消えていく。ミカサはジャケットの下、はだけたシャツから生乳を強調するように覗かせつつ、下半身をくねらせて肉襞で竿の横を執拗にこすりたててくる。その濡れて溶けた感触が、脊髄に氷でも突っ込んだように快感を送り込んでくる。
ミカサは下半身のバネを縦横に使い、エレンの我慢の限界を誘っていく。少しつつけばどこまでも埋没していきそうなとろとろの肉に包まれながらしごかれるうちに、横の表皮だけではなく、亀頭の部分にもっと直接的な加圧を受けたくてたまらなくなる。
ミカサの胸がジェル状の柔らかな動きで谷間を見せつけながらふるふると揺れ、揺れるたびにエレンの勃起が肉厚の花弁にからめとられて、喘ぎたくなるぐらいの快感が脳に突き抜けた。
「エレンが望むなら……私はなんでもする……犬のように這いつくばれと……口でしろと言うのならそうする……手でも……胸でも使ってくれて構わない……」
気づくと、ミカサの胸を食い入るように見つめている自分がいた。自分とミカサの間に挟まれて波打つ淫乳に、がちがちの赤い勃起が乗っている。エレンは頭を振ってよこしまな思いを追い出そうとする。知らない間にずいぶん自分も煽られてきていたことが、どうしてもショックだった。
「なぁミカサ、俺はそんなことはしないって何度も言ってるよな……」
「……知っている。エレンはやさしすぎる……私はそれが不満だ……」
「もうやめてくれ……俺はただ、ミカサが喜ぶからつい……」
「そう。エレンは流されやすい……とても、弱い」
ミカサは濡れがちの瞳を忠誠と心配の色に染め、突き刺さるような評価を下す。
ミカサの黒い瞳にそうやって目で訴えかけられると、どう説明すればいいのか、エレンはとにかく弱ってしまうのだった。
ミカサはエレンの硬く反り返りそうになる勃起を手で制しつつ、微妙に角度を変えた。真横から陰貝にあてがっていたのをもう少し上向けて、興奮で痛いぐらい膨らんだ亀頭にぐじゅりと花弁を触れさせる。
「あっちょっ、やめろ、ソコ、触んなっ……」
「弱いから、悩む。欲に負けるのが嫌だと言いつつ、私を誘う……」
「誘ってないって何度言えば……」
「悩むことはない……私はただ、エレンの弱さを補うだけ」
エレンは息が詰まって反論もできない。足の裏から股間まで一本芯でも通されたように快楽を求めて力が入る。腰の奥に甘い電流でも流されたように、陰茎のこわばりが強く大きくなる。
ミカサがほんの少しだけ動き、下陰唇のねっとりとしたくちづけがエレンの傘のせり出しをしつこく覆う。思考がどろっと流れ落ち、ひざから崩れ落ちたくなるような淫楽がどっと脳内にあふれ出た。
「くっ……うぅ……」
「ほら、私にこうされただけで……エレンは我を失くす……」
エレンはミカサのゆるゆると波間をたゆたうような動きが狂おしいほどもどかしくて、ぐぐ、と腿にも背筋にも力が入る。
くちゅ、くちゅ、と、ミカサはキャメル・トウの一番上にぬめ光る血のように赤い豆突起めがけて、エレンの角度を調整していく。
「はぁっ……あぁ……エレンのでぇっ……ここをぐりぐりすると、とても……気持ち、いいぃっ……! 潰して、ぷちゅぷちゅってぇっ、あぁっ、ダメぇ……! 感じ、すぎる……!」
エレンは疲労のあまり顎が上がってくるのを意識した。まぶたが下りてきて、全神経が陰桂の皮のこすりたてに集中してしまいそうになる。甘くくすぐるようでいながら暴力的な多量の脳内麻薬が、エレンの思考をほとんど使い物にならなくさせていく。
「くぅぅ、ふうぅぅん……♥ 硬くて、まっすぐで、私の中に入りたいって……すごく、言ってる……エレンのここは、とてもかわいい……」
ミカサの指と腰がバラバラの動きでエレンの傘や裏筋を自分の割れ目にこすり付け、じゅくじゅくの粘液をまんべんなくまぶしていく。その激しすぎる水音に、耳から陵辱されてる気分になってきた。
「エレンは何も考えなくていい……あなたは私が守る……
身をゆだねてくれればいい……私を、受け入れてくれればいい……
悩むことはない……ただ、いいことだけ考えていればいい……」
ミカサはエレンの勃起で陰核をすりばちのように潰しながら、溶けきった顔で首を振る。ゆっくりと揺れるつむじの不規則な動きが、ほんものの陶酔からくるものだというのは一目でわかった。
ミカサは最初からクライマックスで、今はぎりぎり踏みとどまっているような有様だった。
「エレンも期待していたでしょう……? いつもより私を気にしていた。何度も私の方を見ていた……おかげで私はずっと苦しくて……」
飢えきった肉食獣のようながっつき加減でミカサの舌がエレンをねぶる。唇、その裏、舌先、その奥へと、甘くみだらな交接を続けていく。
そのキスだけでエレンは背筋がびくりと震え、刻一刻と近寄ってくる快楽の予感が精の管の奥のほうに芽生え始める。
「あぁ……もう露が出てきた……こんなにびくびくして、辛かったでしょう……」
ミカサがエレンの切れ目に滲む透明な雫を愛しそうに指ですくい、ちゅぷ……っと口のなかに含んだ。
「待って……いま、楽にしてあげる……」
ミカサはエレンの方へ不自然に腰を捻ると、どろどろの陰唇をそっとエレンの上に覆いかぶせた。
そのまま、腰を一気に押し込めていく。
「はぁっ、ひぃ……っ! んんッ――んくぅっ! あ、あ、はぁっ、入って、くる……! おっきい……すごく、つら……あはぁっ……!」
ミカサの甲高い声が脳天に突き刺さる。つぷり、と先端がミカサの入り口を物柔らかに押し広げ、薄桃色の深い裂け目に肉の棒が深々とつき立てられていった。
「あぁぁ、エレンのが……すごく奥まで入ってる……」
左右にたっぷりとくつろげられた肉のクレヴァスから、陰棒がそそり立っているのが見える。生の肉襞のピンク色がそこからはみ出ていて、呼吸するようにひくひくと震えていた。脈動のたびに透明な粘液が溶け出してきて、太い血管を這わせた勃起に絡む。
ミカサがエレンの腰を抱くと、ぬらつきを帯びた浅黒い勃起が滑らかな動きで飲み込まれて、動かなくなった。がっちりと根元まで受け入れられている。快楽が押し包まれた陰茎の表皮から流れてきて、腰の骨からどろどろに溶かされていきそうだ。
「ンンッ……入っ、た……エレンを……全体で……感じる……すごくたくさん……感じる……うぅっ……はあぁぁぁっ……」
ミカサは美乳が歪むほど体を密着させてきて、ため息をついた。背中と腰に回された腕がきりきりと力を強め、より深くをこじあけるようにして、中洞の行き止まりに先端が沈んでいく。
「ふ、かいぃっ……! どんどん……入ってくるぅぅっ……!」
ミカサの体にごりっと音でも立てそうなほどぶつかると、エレンの肺から全部の息が搾り出されて無様なうめき声になった。体が震えて、てろてろの淫水にまみれた胎内をえぐってやりたくなる。
「私の……心臓は……エレンに捧げる……体も全部、あげよう……それが私には一番の幸せだから……ッく、あぐぅっ……! エレン、あまり、大きくされるとっ……! 自制が、きかなくなりそう……!」
そうは言っても自在に操れるものではない。無駄のない筋肉の上に載ったまっしろな乳脂肪がふよんふよんと頼りなくさざなみを立てている。形のよい胸のひんやりした感触をべったりと押し付けてこられるような完全密着体勢で、制御しろと言われてもできないのはエレンも一緒だった。
ミカサは黒目がちの瞳を泣き出しそうに潤ませて、大きく眉を寄せる。だらしなく開いた口から、はっ、はっ、と浅く乱れた呼吸がこぼれ落ちていた。
「エレンが好き……ずっとずっと前からエレンだけが好き……世界の何よりもエレンが大事……エレンさえいたら……もう何もいらない……っくぅ……ううぅふぅっ……エレンん……エレンと一緒にいられるだけで……! すごく、すごく幸せ……!」
言葉どおり感極まったトロ顔で頬を薄桃に染め抜きながら、ミカサはしどけなくエレンの首に手をかける。唇をついばんで、いっそ狂気じみた恍惚を瞳の中に浮かべて、体をゆっくりとくねらせた。
ミカサの細腰がぐるりと円を描き、ぐぢゅぅっ、と限界まで圧搾するような濡れ音が響き渡る。
一度抜いて挿しただけの動作で、全部持っていかれそうなむずがゆさが尿道を突き抜けた。熱くひくつく柔襞が隙間なくぴったりと張り付く感触に、目の前が遠くなる。
「もう我慢できない……っ! ふぁっ、はっ、あぁっ、あああっ、はぁぁぁっ!」
ミカサは不自然な体勢から驚異的なしなやかさで恥骨を擦り付け尻を揺らし、スムーズに抽送をし始めた。
水と快楽で限界までふやかされたミカサの胎内が、エレンの先端から根元までをするっと受け入れてはまた離れていく。絶妙なうねりと収縮を繰り返すその中に何度も何度もエレンのものが扱かれる。
打ち付け続けるごとに結合部は蜜と空気が絡まりあってぐちゃぐちゃになっていき、ずぷっ、ぐじゅっ、ぬぢゅっ、と、あられもない水音が立ち始める。
べちゃべちゃの柔肉がこれでもかというほどねっとりと絡みつき、吐精を欲するようにぐずぐずになっていく。
「ひぃぃっ、いいぃっ、すごくいい……! すきぃっ……! エレン好きいぃぃっ……!」
ジュグゥッ……ズチュゥッ……ヌグプゥッ……
きっちりと食い締めて離さない胎内をミカサは腰のスナップで上下に揺り動かし、膨れ上がった硬茎を舐めしゃぶるように刺激していった。甘く柔らかい感触がエレンにたっぷりとまとわりつき、裏返りそうなほど激しく包み込みながら上から下にスライドしていく。
「きついっ……、抜け、そうっ……!」
不自然な体勢で足を開き、エレンを迎えているからか、ミカサは思うように動けないようだった。
「エレン……こっちに立って……そのままだとっ……動きにくい……」
「うわっ!?」
ミカサはエレンの体を強引に引っ張り、入ってきたドアの板へと押し付けた。その膂力の強さにエレンはなすすべもなく板ばさみにされる。背中を預けたドアが、ぎぃっ、と、脆い蝶番の音を立てる。
「これでいい……」
エレンを固定することで動きやすくなったのか、ミカサは倍以上のペースで腰を使い始めた。ぎっ、ぎっ、ぎっ、と、今にもドアが外れそうなほど軋む。激しすぎる動きを耐えているのは、頼りないかんぬき一本だけだ。
ミカサに真正面からがっちりと押さえ込まれて、窒息しそうになる。
「あぁっ……こうするとぉっ……すごく、深いぃっ……! エレンのが、ごりごりって……言う……!」
視線を落とすと、肉竿にぱちゅぱちゅとリズミカルに打ち付けられる結合部が目に入る。包皮のついた赤い神経珠の根元までざっくり割られた熱襞が、暗紅色の粘膜をちらつかせながらたっぷりと太い幹を飲み込んでいる。神経の隅々まで侵すような甘苦い快楽が竿のてっぺんから腰の奥までを串刺しにしていく。
エレンは急速に坂をかけのぼっていくのを感じた。パルスが容赦なく快楽一色で染め上げられ、ミカサの襞にこすられるのがどうしようもなく心地いい。
ミカサはひたむきに動き続けた。痛いぐらいの締め付けでエレンの上から下までを容赦なく絞り上げ、その動きにはいっぺんのためらいもない。休むことなくガンガン送り込まれてくる熱いうねりと性快楽がエレンをがけっぷちに追い詰めていく。
「……く、うぅっ……」
こらえきれなくなった吐息がエレンの喉から漏れていった。直線的に高まっていく感覚に、体裁が取り繕えなくなってきている。
「エレン……」
ミカサが立ったままの抽送をひたすら行いながら、気遣わしげに覗き込んでくる。黒い丸い瞳が自分を大写しにして、うっとりと溶けていた。
ミカサにドアへ固定されつつ、心から嬉しそうに見つめられて、エレンは心身ともに逃げ場を無くして目を泳がせる。頬が異様に熱いので、きっと無様な赤ら顔を晒しているのだろうと思う。
「エレン、そろそろ……」
ミカサがうっとりと呟こうとしたとき。
――バタバタバタッ!
遠くから人の足音が近づいてきて、まっすぐトイレの中に駆け込んできた。
「――!」
エレンは戦慄し、とっさに息を止める。
「はぁーっ、間に合ったぁーっ、とっととぉ……」
ドア一枚へだてた向こうで、誰かが用を足している。
ミカサもその音を聞いていないはずがないのに、相変わらず苛烈な動きでぐちゅぐちゅとエレンを攻め立てていた。
――ぐちゅっ、ずっ、ちゅっ、ぬっ、ぷっ、ぐぷっ……
肉同士がすり合わされ、つぶれて溶け合う生々しい音と、こらえきれない荒い息がトイレの個室に鳴り響く。エレンのみぞおちに冷たいものがつきあがる。
「ミッ、ミカサッ、ちょっと止まれって! 聞こえたら……」
小声でたしなめても、ミカサの動きは止まらない。リズミカルなストロークがエレンの体に容赦なく叩きつけられ、エレンの背中をドアへと押し付ける。焦りを深くしながら、エレンはすんでのところで踏みとどまる。錆びた蝶番の音はよく響くことだろう。吐息は誤魔化せても、ぎしぎし言う扉は誤魔化せない。
「やっ、やめっ、ミカサッ……! あ、くぅっ……」
「エレン、静かに」
「お、お前が揺らすからっ……!」
「わかってる……でも、止まらない……」
――じゅぷっ、ぬぷっ、ずぷぅっ、ぬちゅっ、くちゅうぅっ……
息を殺した固執の中で、粘ついた水音がやけに大きく聞こえる。
「あれーぇ? なんか変な音がすんなぁ」
恐怖にエレンの体がすくむが、ミカサはお構いなしにエレンをがっぷりとくわえ込む。ねっちょりと蜜と柔肉でエレンの肉棒の表皮を絡めとり、隙のない動きで抽送を繰り返す。目の前に桃色の霞がかかり、背中がドアにくっつきそうになる。必死に体勢を整えなおそうとしても、猿のように同じ動きを繰り返すミカサの欲望一直線の性戯がそれを許さない。
――ずぬぷっ、ぐぶぅっ、ぬりゅぅっ、ずぷぷぅっ……
とろみきった甘い摩擦にがんじがらめにされて、エレンはひたすら早く時間が過ぎることだけを祈った。
だが堪えられそうにない。エレンは必死に訴える。
「頼むから……動かないでくれ……!」
「やぁ……はふぅんっ……止められない……もっと……もっとエレン……エレンがほしい……! ひ、ぁ、くぁぅぅっ……」
――ぱちゅっ、ちゅんっ、ぬちゅんっ、ぱちゅうぅっ……
皮膚同士がぶつかり合う高い音さえ混ざり始めて、エレンはとうとう自重を支えきれなくなった。背中がドアに全体重を預け、はずみで蝶番が軋む。
――ぎしぃっ……!
静まり返ったトイレ内に、その音はよくこだました。
「なんだぁ? 誰かいるのかぁ?」
ぎしっ、ぎしっ、とピストンのペースで悲鳴を上げ続ける蝶番を気にしながら、エレンはなんとかミカサを押し返そうとする。
「やばいって……!」
しかしミカサの強い力に押し返されて、扉に磔にされたまま少しも動くことができない。その間もミカサの腰使いはまったく衰えを見せず、一定のペースで動き続けた。
「でも……これ……すごいぃっ……! エレンが……いっぱいになって……っ!」
――ギシッ、ギッ、ギッ、ギィッ!
「あぁぁん……っ!」
扉の外にいる男が、いぶかしげに声を出す。
「誰かいるのか?」
(やばっ!)
エレンは進退窮まって、とっさにミカサの唇をキスでふさぎにかかる。
「ふんんん……! んふーっ、ふぅーっ!」
ミカサが飢えたようにたっぷりと舌を絡めてきて、舌先にぴりっと甘い快感が走り抜ける。溶け合うような気持ちよさが唇や舌を侵食し、ねぶり、すすりあげる。
――ちゅぅっ……ちゅぱっ……ちゅっ、くちゅっ……
ミカサの肉襞が嬉しげに収縮し、傘から竿にかけてをぎちぎちに食い締める。その快感が継ぎ目の余皮や竿の生肌をどろどろに溶かしつくし、エレンの性感も直線的に高みへ上り詰めていく。
「あぁっ……もう……もちこたえ、られない……はぁっ……エレン……もう、限界だ……」
達成寸前の妖艶な動きでエレンの唇に吸い付き、ミカサは胸を激しく揺らして最後の仕上げにかかる。
その絞りつくそうとする動きにエレンもいよいよ決壊しそうになり、射精の衝動がぞくぞくと背中をかけあがる。
「気のせいかぁ?」
外の男は不思議そうに言い、のんびりと出ていく。
(はやく通り過ぎてくれ……はやく……!)
焦れながら念じても、男の足音はひどくゆっくりと遠ざかっていく。
ひくっと喉が鳴って、ミカサの声が痙攣したように漏れ出しかける。それをエレンが必死になって吸い上げ、より深くに舌を差し込んでいくと、とうとうミカサは肉壷をびくびくっと痙攣させた。
「ん、ん、んんんーっ……!」
悲鳴を封じ込め、エレンはぐちゅぐちゅと舌を交接していく。そのたびにミカサは肩を震わせ、柔襞をこれでもかというほどはげしくわななかせて、長く長く絶頂する。
ミカサはガクガクと体を震わせてイキながらエレンを深く飲み込み、亀頭で子宮口をぐりぐりとにじり尽くす。焼け付くような快感がエレンのものを締め付ける。
「ふっ、ふぁっ、んんんン――ッ!!」
(きっつ……!)
あたたかな襞がぎゅうぎゅうに根元に巻きついたまま激しい収縮を繰り返す。
(やばい、もう、俺も出る)
ドアをきしませないようにと精一杯ふんばっていた足が痙攣し、焦りと耐え切れない快楽がせめぎあう。
激しくしごきあげる襞の感触に、エレンもつられて引き金を引かされた。ぞくん、とひときわ大きな快楽が背骨からかけあがり、とめようもないほどめちゃくちゃに溢れて、エレンの砲身を焼き尽くした。
――びゅくっ、びゅっ、びゅるるっ……
息づまるような緊張感のなかで吐き出しは長く続き、エレンは頭の中を真っ白に焼き尽くされてぐったりとなる。
「んんーっ、っぷはぁーっ! はぁーっ、はぁーっ、え、エレン……」
ミカサは余韻で恍惚としながら、エレンの胸にしなだれかかった。
「キス、すごかった……」
「お、お前がうるさいから仕方なく!」
「エレンの愛が伝わってきた……すごくよかった……」
ミカサはほわほわと地に足つかない甘い口ぶりで感想を述べる。
「……もう好きにしろよ……」
エレンは今度こそ完全に匙を投げた。
「んんっ……」
凛がごろりと寝返りを打つ。体が熱に浮かされたように火照っていて、なかなか寝付くことができない。
一人きりになってしまった屋敷の寝台で、何度寝返りを打とうとも、シーツがするすると鳴く音がするだけで、あたりはしいんと静まり返っていた。優しく手を伸べてくれた母も、もういない。
目が冴えてしまっている原因は、分かっていた。
――にゅぐっ……ぬちゅっ……ずずっ……
胎内に、丸々と肥え太った蟲が一匹、がっぷりと食い込んで離れないのだ。
「はぁっ……あうぅ……」
凛自身の手で抜き取ろうと、中の襞をかきわけ、懸命に小作りの指先で中をかき乱してみたものの、虫の表面はつるつるとしていてとっかりがなくて、巧みにぬるりと逃げてしまう。
それが四六時中、凛の体を苛んでいた。
おかげで凛のそこはお湯でもこぼしたようにとろとろあわあわと体液が滲み出し、何度下着を履き替えたって、すぐにぐしょぐしょになってしまう。
棒切れのように幼げな脚を、下着やタイツで厳重にくるみ、シーツの上にタオルを何枚重ねても、すぐに濡れそぼる気持ち悪さで目が覚めてしまうのだった。
「もう! なんなのよー!」
じくじくと、腰から下が切なく疼く。凛は短気を起こして、パジャマと下着をまとめて脱いでしまうと、グロテスクな蟲ががっちりと食い込むつるつるの肉の合わせ目に、こじ開けるようにして指を差し挟む。
「んんんっ……!」
こぽっと泡を立てて、中の蜜がこぼれていった。ぬめる襞を指の腹でぐにぐにと割り開き、中の蟲に爪を立てて引き出そうとする。ぷちゅり、と蟲の皮に爪がささって、芋のような蟲の体が、ずぷり、とわずかに引っ張られる。
「あ、あ……だめぇっ……♥」
蟲のまるっこい体が、凛の小さな入り口いっぱいに膨張しているだけでもおかしくなりそうなのに、それを引き抜こうとすると、擦られた媚壁いっぱいに電撃が走ってしまって、それ以上指の力が入らなくなってしまう。
「う、く、くぅぅっ……♥ もっと……強く、強く引っ張ればぁっ……♥ あはぁっ……♥」
蟲の体が中ほどまで抜けたかと思うと、外気の寒さに身震いしたように蟲が命を吹き返し、自分で勝手に中まで戻っていってしまう。ずず、ず、ず、と、蟲が体を蠕動させて、内壁を遡り、奥までもぐりこんでいく。
「ひぃっ……イィン……いぃぃぃ♥」
子ども特有の甲高いソプラノが、ありうべからざる嬌声になって、かわいらしく室内に響く。声をあげながら目だまをひっくり返して体をくねらせる凛の、小さな股の間で、黒光りする蟲が、じゅぷじゅぷと潤滑液を噴き出しながらひどくゆっくりうごめいている。
充血し、シロップを垂れ流す桃のような合わせ目に、凛は夢中で指先を這わす。付け根のぷっくりと膨れ上がった小さな木の実のような粘膜が、蟲の胎動とは違う快感を、幼く脆い凛の脳に、びりびりと放流してくることが、おぼろげながら分かってきていた。
「ぬ、抜けそぉっ……♥ 抜けそおぉぉっ……♥ もすこしでぇっ、あぁっ、抜けそうだよおぉっ……♥」
蟲の頭を引っつかみ、気が遠くなるほどの快感をがまんして、少しずつずりずりと引き抜いていく。
蟲が遅々とした動きで胎内に戻ろうとする動きが、凛の敏感な粘膜を暴虐にこすっていって、それだけで凛の目の前はちかちか七色に光ってしまう。
「あぁっ! 抜きたい♥ 抜きたいよぉっ♥ もうちょっとだからぁっ♥ お願いだからぁっ♥」
石を積み上げては崩すように、虫を引き抜こうとしては元に戻る作業が延々と続き、凛はこらえきれなくなって、しゃにむに指を動かしてしまう。
「くぅぅぅぅんッ……♥」
生意気そうな顎をくんっと可憐につきだして、愛らしい大ぶりの瞳をとろっとろの快楽に歪ませて、凛は手もなく果ててしまった。
疲労が、泥のような眠気をつれてくる。
***
次の日も、その次の日も凛は自室にこもりっきりだった。
「はいっ……んンッ……まだ熱があるみたいなんです……
はうぅぅんっ♥ ……いえ、なんでも、ありませ……きゃふぅっ♥
はい……はい……お休みということで……よろしく、おねがいします……」
学校に休学の連絡を入れてしまえば、あとは誰に邪魔をされることもない。
蟲に胎内を犯され抜いてから、三日が過ぎた。
凛の体はそれを受け入れ、甘い快楽を次から次に送ってきてくれる。
「どうしよぉっ……なんとか……なんとかしないとぉっ……
んんんくぅぅぅっ♥」
父の蔵書に記述はあった。間桐の蟲は胎内に共生させることで、擬似的な魔術回路を生み出す。凛が初日に見せられた幻覚も、強烈な依存性を持つ破滅的な快楽も、すべて蟲の仕業だろうと思われた。
ならば、と凛は思う。桜を倒せばいい。この蟲を取り除かせないことには、凛に明日はない。
凛が持っている宝石のすべてを駆使してでも。
「んんんぁぁぁぁっ……♥」
定まらない指先で、いっとう高価な宝石の数々をわしづかみにし、スカートのポケットに仕舞い込む。
這うような動きで、凛は街中へ飛び出した。
***
間桐の家へ行くのには、公園を通っていくのが近い。
小雨が降りしきる公園には、誰の姿もなかった。
「ねえさん」
特別大きな声というわけでもないのに、その声は凛を芯から凍りつかせるほど強く響いた。
「あそびましょう?」
「……出たわね」
砂地を地味な紫暗の靴でひたひたと進みながら、桜が言う。
蟲が葉ずれのようにさざなみ立ち、桜の周囲を暗く染めあげた。
その足元に宝石を投げつける。
破裂し、煙幕をあげるだけの猫だまし。しかし、それでも桜はすこしたじろいだ。
(やっぱり。桜は、蟲以外のことなんて、何も知らないんだわ)
この蟲の群れさえ踏み越えられれば、相手は桜一人だ。桜の髪をつかみ、張り手をして――とにかく、喧嘩にでも持ち込めれば、まだ十分に勝機はあるのだ。
桜まで、ほんの二歩の距離だった。
突然、頭のなかで、ぱん、と音が鳴った。
(鉄砲……? ちがう、これは……)
天地がひっくり返り、凛は無様に転ばされる。黒い雨雲が、太陽の光をほんのりと透かしながら微細な雨粒を撒き散らしている。真上から降ってくる雨の針。
「いったでしょ? あたまのなかを、ちょくせつたべるって」
桜の声が遠くで聞こえる。そちらを向きたいと思うのに、降雨から目が離せない。泥が凛の頭を冷やし、スカートを履いたおしりを冷たくしていく。
「ねえさんはね、あやつりにんぎょうとおんなじなの。おもいどおりにうごかされるだけ。ただの、にく」
桜が、心底つまらなさそうに呟く。
水が滞留する沢のように、蟲がさわさわと鳴き声をあげた。その無脊椎特有のぬめりと冷感が、凛の手足をからめとっていく。
桜の二本の足が、凛の体の、すぐ真横まで歩いてきて、止まった。
「ねえさんにあげた蟲(こ)は、返してもらうね」
凛の太もものはざ間から、巨大な蟲がうぞうぞとうごめき、頭角を出した。
「ひっ……ああぁぁぁっ♥ あ、あ、あ、あっ……♥」
あれほど望んでいた蟲の排出が今まさに叶っているというのに、凛は何も考えられない。虫が媚肉をこすりあげる感覚に、丸みの乏しいお尻がぴくぴくとしなり、ひざががくがくと笑ってしまう。
蟲がまっすぐ桜のもとへと進んでいき、その足にぴとりと吸い付く。
「どうだった? ……そう。そんなによかったの。ねえさんのまりょく。
とってもおいしそう」
桜が抑揚のない声にほんの少しだけ喜悦を混ぜて、そっとスカートを持ち上げる。その奥に、下着は履かれていなかった。蟲が、鳥の皮のような窄まりに、するすると音もなく這い上がっていく。
桜の足の付け根に、その蟲はずぷりと頭をめりこませた。
「……はぁっ……ねえさん……ねえさんのまりょく……」
桜がうわごとをもらし、腰からずるずると崩れていく。寝転がされ、身動きが取れない凛の視界いっぱいに、その奥が広がっていく。
蟲が大きな体を狂ったように蠕動させて、桜の胎内に激しい責めを与えていた。皮のあまりが限界まで引っ張られ、うす桃色の内粘膜が、どろどろのゼラチンまみれになっているのまで、はっきり見える。
「これ……すごぉい……♥」
桜はへたり込んだまま、蟲が暴れるのに身を任せた。小さな孔が楕円に膨らむほど拡張されながら、大きな黒い虫に、ずぷずぷと出入りを繰り返されている。
じゅ、じゅぷ、ぷちゅっ、くちゅっ、ちゅ、じゅ、ぷじゅっ、
「はん、あん、あぁ、すごい、いい、あぁっ……」
刻むように早く早くなる動きに合わせ、桜は短く嬌声を跳ねさせる。
凛はそんな桜から、目を離すことができない。
蟲は激しく、狂ったようにのた打ち回り、桜の柔肉をこれでもかというほど巻き込んで外に頭を出したかと思えば、奥底を食い破るのではないかというほど中まで、粘液をしぶかせながら潜っていく。
あんなに強く、早いスピードでおなかの中を揺さぶられたら、と、凛は想像してしまう。
きっとそれは、とても気持ちがいいに違いない。
「……はぁっ♥ あん♥ んんっ♥ ねえさん、も、ほしい?」
「は、はあっ!? だれがっ……!」
嘘だった。食い入るように見つめていた自分に気づかされ、凛は慄然となる。
三日三晩、ああして犯され抜いたのだ。今更あの快楽から目を離すことなどできはしない。
桜は見せ付けるようにスカートを持ち上げたまま、小ばかにしたように凛を見下げる。
「でも、いまはだめ。ちゃんとおねがいしないとあげないよ」
(お願いをするですって?)
凛は痛みの隙間で、ぐわりと膨れ上がる怒りを自覚する。
「そんなこと、誰がするもんですか!」
地に堕ちるような真似など、絶対にできない。ぎりりと歯をかみ締めながら、桜をにらみつけてやった。
「そのほうがらくなのに」
桜はお風呂上りのように茹だった頬をだらしなくゆるませながら、凛に嘲笑を浴びせかける。
蟲は絶えず桜の中を犯している。桜の内奥も、たぱり、とみだらな汁が桜の中から吹き零れてくるほど充血していた。
くぷ、くぷ、と、浅いところをかき回す音に、凛は頭をかきむしりたくなった。それがどんなに気持ちいいのか、もう体は知ってしまっているのだ。
「きょうはね、ねえさんにもういっぴきプレゼントしてあげる。
うれしいでしょ?」
桜が取り出したのは、脳に寄生させるタイプの、小ぶりの蟲だった。耳孔を通り抜けられるほどの、細長い黒い虫。
「な、なによ……!」
「この蟲(こ)はね、ねえさんを、もっともっときもちいいからだにしてくれるよ」
「いや、っあぁ、ああ、あああああああ!」
蟲がぞわぞわと耳のうぶ毛を逆なでにしながら、ガサゴソと恐ろしい音を立てて凛の内耳を通り抜けていく。
「あああ、あつい、熱いよぉ……!」
胸のさきっぽが、急に熱く熟れだした。こんもりと乳首が持ち上がり、イチゴのように大きく肥大してしまう。
「ああ、あ、いやぁ、あぁっ……♥」
凛の人形のようにすべらかな胸に、膨れ上がった不恰好な乳首が形を現す。それは凛の服をこんもりと盛り上げて、先端からじくじくとしずくをにじませはじめた。
「ふく、服ぅ、こすれてっ、あぁっ……♥」
薄く盛られたプリンほどもない小さな胸板を懸命に震わせて、さきっぽを布にこすり付ける凛。
こりこりになったそこには、ほんのかすかな繊維の刺激も強すぎるぐらいの起爆剤だった。
「ねえさんはね、おっぱいがでるようになったんだよ。
これをぜえんぶ搾り出したら、あの蟲(こ)は枯れてしんじゃうよ。
でもね。ずっと枯らさないでいると、あの蟲はちょっとずつのうみそをたべていくから。ねえさんはどんどんむしのあやつりにんぎょうになっていくんだよ?
ああ……それとね。ねえさんは、もうじぶんでじぶんのからだにさわることはできないよ。
しぼってほしければ、だれかにおねがいしてごらん。
たとえば、わたし……とか」
「あぁっ♥ ふ、ふざけないでよ! ……うくぅん♥」
凛が反射的に答えると。
「……そう。ふふっ。じゃあ。がんばってね」
桜が立ち去ると、ようやく凛はその場から動けるようになった。
***
虫はいっせいに群がってきた。
凛のおなか、わき、ひざ、ほっぺ。おしりや、てのひらのぷにぷにしたところ。
凛のやわらかな肉すべて。
そこに向かって、虫たちは、一斉に牙をつきたてた。
「いぎいぃぃぃっ! いた、痛い、痛い痛いいたいいたいいたいぃぃぃっ!」
脳が焼き切れるかと思うほどの、すさまじい痛みが一度に襲ってきた。
目の前が真っ赤に燃える。肉を食い破られる痛みが、大砲のようにこめかみを打つ。痛みを痛みと認識しきれず、凛の唇から笑みがこぼれる。
「あはぁっ、いた、痛い、いたたたた、痛い痛い痛い痛い、あはっ、あははは!」
凛の耳の隙間へ、虫たちがぞろぞろと恐ろしい音を立ててもぐりこんでいく。
耳の中を、虫が暴れまわっていく。
「い、ひゃ、ああん! いぃぃひゃああぁぁ!!」
耳朶の内部に直接響く音は魔物の吼え声にも似ていて、凛はそのまま気を失いかけた。
すさまじい痛みが耳の奥をかきまわした。世界から唐突に音が消えた。ありうべからざる、花のような香りがした。内蔵が裏返るような心地がした。何もしていないのに、右足が激しく痙攣して、動かなくなった。体を操る糸という糸が切れてしまったように、意識はあるのにどこも動かせなくなった。鉛のように重かった。
吹き荒れる苦痛。何もできない恐怖。ふいに口のなかが何かでいっぱいになった。それは子どもの頃に食べたラムネの味にも、海の水の味にも似ていた。飛行機雲をちぎって食べても、そんな味がするのかもしれない。それは針を刺すような痛みも伴って続いていった。
いじられている。
ふいにそのことだけが理解できた。
頭の中身を、いじられている。
ぞるるっ、と、視界に何かが割って入った。万華鏡のようなきらめきが、周囲の輪郭をあいまいにしていく。虹色がはじけ、プリズムが踊った。
そしてまた、世界は唐突に覚醒した。
はじめに理解できたのは、マグマのような熱だった。
おなかの底に堆積する、蛇のようなうねり。
こわい。
凛はただ殺されるのではない。桜の、温度のないまなざしが、それを物語っていた。
思いつく限り、いちばんひどい方法で殺されるのだ。
こわい。
蟲も、桜も、こわかった。
人ではない、なにかがこちらを見ているようで。分からないことが、より恐怖を駆り立てた。ぽっかり開いたくらい穴のように、桜の瞳には色がない。
凛はもう、なすすべもなく泣いていた。
「うっ……えぐっ……うあぁぁ……っ!」
はしかにかかったときのように、頬が熱を持っていた。あのときは、そう、曲線といい、色といい、りんごにそっくりだね、といってお父様がなでてくださった。
りんごのようにすべらかで、まるくて、みずみずしい。
凛はなんてかわいいんだろうね。
あのときの、誇らしくてくすぐったい気持ちを、いまでも鮮明におぼえている。
「やめて……おねがい……やめてよぉ……」
ひとの言葉など、蟲には届くわけもない。蟲は凛を席巻し、上等な衣服を次々に引き裂いていく。
虫食い状に衣服が破れ、凛の下腹部が露出した。それは、まだ女とも呼べぬような、たいらかでつるりとした表面をしていた。ごく薄い皮に包まれているだけの淫核が、ざくろのように真っ赤な実をのぞかせている。
「やだあぁぁ……」
ぶざまな泣き顔の凛をあざ笑うかのように。
桜は無慈悲に指示を下す。
虫の一匹が、なんの準備も与えられない幼い秘洞に、先端を宛がった。
そのまま、穿孔するように全身をねじる。
凛の身体の最奥へ、ずぷずぷと頭を埋めていく。
「ひっ、いやぁっ、いやあぁぁぁぁっ!」
凛の身体の奥底で、みちり、と何かが弾ける感触がした。身の毛もよだつすさまじい痛みが凛の神経を焼く。圧倒的な質量に押しつぶされそうになり、凛はぱくぱくと口を動かした。
ぼたり、ぼたり、と、瞳から涙が滑り落ちていく。点のように収縮した瞳孔には、ありありと絶望の黒い影。
すすり泣きと絶叫が、震える声でつむがれる。
「いやあぁっ、やだ、やだあぁっ、痛い、痛い、痛いよぉ、痛いいぃぃっ!」
細い四肢を無益に振り回し、ずるずると地べたをはいずって、凛の身体が少しずつ頭の方向へ逃げていく。そうすることで少しでも虫から遠ざかりたいのだとでもいうように。
濡れたような感触がした。焼け付くような痛みと、燃えるような鮮紅色で知る。それは、凛の、破瓜血だった。
透明な赤いしずくが太ももをすべり、地面をぱたりぱたりと汚していく。
ずっ……ずるっ……ぬぷうぅっ……
ぬめる血だけを潤滑液に、虫が凛の秘裂をさかのぼっていく。
繊細な内面は、それだけで、かな釘でひっかかれたような痛みを覚えた。
「ひぃっ! あぁっ、ああぁぁぁっ!」
ひゅーっ、ひゅーっ、と、のど笛が鳴る。かさついた唇からよだれがこぼれ、痛みが脳ごと破壊していく。
あっという間もないほどたやすく最奥に達した虫は、そのまま前後に蠕動を始めた。
血と粘液まじりの内裂が、ぬぷりぬぷりと犯されていく。
凛の身体が小刻みな不随意運動を繰り返す。快感の小さな波に震わされていた先ほどとは違う。灼熱の痛撃がもたらす、避けようのない反射だった。
「ひ・ぎぃっ……うぶっ……ぅぉあっ……」
ぐじゅ・ぐじゅ、ずにゅっ……
やわらかく吸い付く襞のことごとくが、激しすぎる摩擦のせいで剥離していくかと思われた。それほどのひどい痛みが続いた。
とくん……
身体のどこかで、パルスが生まれる。
どくん……
脈動が、凛の知覚を揺るがしていく。
「……ぁ……?」
ふいに、凛の脳を強烈な閃光が焼いた。平手の殴打のように、ぱん、と視界にブレが入る。
「あ……あ……あぁぁぁっ?」
膨大な悦楽が、決壊した洪水のようになだれ込んできた。
(な……なにこれ、なにこれ、なにこれぇっ……!)
ずんっ、と、身体の奥深くに楔が打たれる。とたん、身体の奥からどろぉっ……、と、何かがあふれ出してきた。おなかの奥深くで渦を巻いていたマグマが、袋の一端を破られて漏れ出してきたかのようだった。
熱くて、くるしくて、たまらなく良い。
ソコをつつかれると、もっともっともっともっと欲しくてたまらなくなる。
(これ……『きもちイイ』……っ)
凛はひとたまりもなく、絶頂した。真白い残響が凛の脳内を埋め尽くし、たがが外れたおもちゃのように、手足が、胴体が、めちゃくちゃに痙攣する。
―-びくん、びくっ、びく、びくびくびくん!
「ああぁぁぁぁっ? ああーっ? あーっ?」
全身の骨と肉が溶けてしまったようだった。甘美な酸でどろどろになり、形も分からなくなるほどかきまぜられて、凛は長い長い絶頂を終えた。
生意気そうにとがった瞳をくにゃりと淫蕩に歪めて、凛は甘く重たい息を吐いた。
「はぁん……」
間を置かず、虫がさらなる責めを与えてくる。
ぐぷり、と、水のような濡襞がくぐもった音を立てる。血と淫水と肉片がまじった淫襞の中を、虫が狂ったように暴れまわる。凛の中はそれだけで歓喜するようにわなないた。
ちゅっ、ちゅくっ、ぬちゅっ、ちゅぷっ……
浅く早い律動が、達したばかりの凛の性感を再び煽った。重たく熟れた果実のように、虫が食い荒らすごと、甘い蜜がじゅわっと滴る。
ぐしゅぐしゅになった秘裂が、虫との交歓に打ち震え、きゅうぅんっ……と切なく収縮する。
「んぅぅぅっ……ううぅぅっ……あふうぅっ……!」
精を根こそぎ搾り取るかのように、凛の蜜壷がぎちりとしなり、虫の全身にあますところなく絡み付いていく。
ぬちゅぬちゅの繊細なひだに虫のまるっこい頭がじゅぷじゅぷとこすりつけられ、蹂躙される。それが、たまらなく気持ちいい。
「ああっ、はぁっ、あぁぁっ……!」
ぐぽっ、ずちゅっ、ぬぽぉっ……
浅く小刻みに蠢いていた虫ののたくりが、重く激しい動きにいつしか代わり、凛の胎内を暴虐なまでの圧迫感で陵辱していく。
不思議と、もう痛いとは思わなかった。
目の前が七色に偏光し、かと思えば、黒いパネルがばらばらと崩れ落ちるように色が欠けていく。
「んんんああぁぁぁっ、きもちいいっ? きもちいいよぉっ?
あたまのなかまっしろにっ? まっしろになっちゃうぅぅっ?」
小さいけれども瑞々しい乳房をぷるぷると震わせつつ、凛はよがり声をあげる。
肩や腰がガクガクと痙攣し、食道に棒でもつっこまれたように上体がおおきくのけぞってしまう。
二度目の絶頂が激しく瞬き、凛の手足から力が抜ける。
「……ひぃ……? ぅうぅぅ……?」
桜はそんな姉を無表情に見下ろしていたが。
やがてくすり……と笑みをもらすと、冷たく淡々と言い放つ。
「きょうのところは、このくらいにしてあげる」
「あっ……、ま、待ちなさいよぉっ……!」
「しんぱいしなくても、おたのしみはこれからだよ。
きたいしてて。ねえさん」
桜が去っていくのを、凛は這いつくばって見ているしかなかった。
属性:ロリ、虫姦、魔乳化、調教、綺礼との絡み
(私にしては)ちょっとハードめなのでお好きな方だけどうぞ
プロローグ・桜
持ちうる限りの宝石を投擲しつくし、思いつく限りの逃走を試みた。
それでも遠坂凛は袋小路の隅で、包囲する蟲を蹴散らし切れなかった。
「こ、来ないでよ!」
赤く、ぬめるような生地のブラウスが、スカートからだらしなくはみだしているのにも構わずに。
精一杯の気の強さを、眼力に変えて睨みつける。気持ちだけは、凛は誰にも負けない。幼くとも、凛は、一人前の気概を備えた、誇り高い魔術師だった。
凛は必死で使えるものはないかと探す。何も見つからない。でも、何か、考えないと。
怯えながらも果敢に目じりを吊り上げる少女は、美しく、身なりもよく、一見してお嬢様だと知れる。青い果実を髣髴とさせる太もものニーハイソックスは絹だろうし、胸に提げたメダイユはよく磨かれた純銀製で、自身の髪も、目のさめるような黒色をしている。身分を示すティアラのように、つや光る天使の輪を載せていた。
穢れをしらない白雪。あるいは絶対に手の届かない名画の美少女――麦わら帽子をかぶってほほえむだけで絵になるほどの。あらゆる画家がこぞって筆を執りたがるような、浮き世めいた存在感が、この少女にはあった。
こどもらしい骨格のまあるいおとがい。つんと上向いた美しい鼻梁。すこしばかり我慢の足りない、勝ち気で愛らしい印象の瞳。
桜はそんな姉を、息がつまるような、重苦しい気持ちで見た。このごろはずっと頭が重く、いつでも世界が昏いような心地がするが、姉を見ると、その気持ちがずっと強くなる。叫びたくなる、とでも言えばいいのか。
これは、桜なりの、せいいっぱいの叫びだった。
姉さん。ああ、姉さん――
私と姉さんは、どうしてこんなにも、違ってしまったの。
桜は、色あせた自身の髪に手をやった。くすんだ顔色や、冴えない目の濁りを思った。
醜悪な蟲の塊を、感情のない瞳で見つめた。なにか、大きなやりきれなさがほとばしりそうだった。でも、それもすぐに消えてしまった。
始まりの御三家と呼ばれた遠坂の現当主は凛で、彼女さえいなくなれば、それだけ次代の聖杯を掴むチャンスは増す。しかも彼女は、まだ幼い。
基礎的な魔術の行使すらままならぬ身だ。
盟約を破棄するだけの利得を見込んで、間桐の翁は桜をけしかけた。
姉を憎め。あれは、お前を踏みつけにして幸せを甘受しているのだ。
子ども同士のたわいない諍いと見せかけるための小細工の仕上げに、桜に蟲の秘法のしかじかを惜しみなく与えて、凜を襲うよう仕向けたのだった。
第一話・蟲との初交合
「……むだだよ」
桜は些かの感興も見えぬ瞳で姉を見る。路傍の石か、枯れ草か。その程度のぞんざいさで、凛の足元を狙う。当意即妙に、蟲が凛の足を転ばせた。
「きゃあああっ!」
いつも誇りを持ちなさいと教えられたことなど、彼方に消し飛んでいた。目に見える巨大な闇があぎとを開けている、その異形の暗さ・異様さ・恐ろしさに、いっとき凛は自制を忘れてしまった。
パニックを起こしたからだに、一匹の蟲が食らいつく。頑健なあぎとに咀嚼される痛みが、二の腕にじんわりと広がった。
「いたっ、いたい、いたたたたいたいたいいたいよぉ!」
「いいよ。行って」
桜はいったん雑魚を引かせると、やはりつまらなさそうに最秘奥の蟲を解き放つ。
おもてに出れば封印指定は必定とも思われるほどの大容量の魔力が、凛という器めがけ、蟲の形で束縛を与えていく。魔術の手ほどきをなんら受けぬ桜には、それはただの『蟲のうちの一匹』だったが、凛には違う。
多少なりとも心得のある凛だからこそ、その蟲の有り様を一目見て悟った。
遠坂凛は、このまま、殺されるのだと。
「ひっ……ここここなっ、来ないで、こないでえぇぇぇぇ!」
悲鳴がほとばしった。声が、枯れるほど裏返った。
見たこともないような巨大な虫が蝗のように群れ来て凛の回りを包囲しているだけでも十分恐ろしいのに、今凛の手足を拘束している蟲は、もっと名状しがたいおどろおどろしさを持っていた。
「せつめいしてあげるね」
桜は新品の家電の説明書でも紐解くような気軽さで、淡々と告げた。
「そのムシさんは、あたまの中をちょくせつ食べるよ。しんけいのたばをしげきして、いたいってかんじるときにあたまのなかに出るものを、きもちいいってかんじるものにかきかえちゃうんだって。つまり」
桜はろれつのあやしい、子どもっぽい声で、残酷な運命をつきつける。
「姉さんはいたいのがきもちいいっておもえるようになるよ」
蟲の行進が始まった。無脊椎動物を思わせる脆弱な外皮をしとどに濡らし、原初の本能の命じるままに、桜めがけて進んでいく。
何十、何百、あるいは千を超えるだろうか。
「いやぁ……! こないでぇ……!」
父が存命のころ、凛のためにとあつらえてくれたエナメルのくつに、大量の蟲がたかっていく。蟲が靴下の繊維を食い破り、凛の体を暴露していく。
踏み潰したり叩き潰したりしようと凛が果敢に奮闘するが、虫の動きは予想に反してかなり素早い。
「ええい、このぉっ!」
するりと虫が足の間をすり抜け、ひざの裏に取り付く。その濡れた感触に、凛は全身の毛を逆立てた。
「ひゃあっ! つめたいじゃないの!」
もう片方の脚でけり落としている間に、別の蟲が脚を這い上がってくる。うぶ毛もなく、ライチの実のようにつるりとした凛の白い肌。そこに、深海魚のようにのっぺりとした、ぬらぬらの蟲がびっしりとまとわりつく。
「ちょっとっ! いやっ、やめてよっ!」
一生懸命にらみつける目にわずかに涙を浮かべつつ、凛の手足がむなしく振り回される。
「やぁっ、きもちわるい、やだやだやだぁっ!」
大量の蟲が凛の体を席巻し、服を食い破って、もぐりこんでいく。
「ひぁっ……!」
蟲がおなかのうえをすべり、そのもっと上、胸や首のほうまでせりあがる。下から登っていくごとに、服が虫食いの穴でぼろぼろにされていく。お気に入りのシルクシャンタンのブラウスが、消化液で無残に溶かされていくにつれ、凛のわき腹が、肋骨が、胸のあえかなふくらみが、スクラッチでこすりとられたようにちょっとずつあらわになっていく。
ちぎって捨てても、叩き落としても、あとからあとから蟲は登ってきた。
「ひいうぅぅぅ!」
首をせいいっぱいそむけて頭を振っても、蟲から逃れられるわけもない。生理的な嫌悪感に頬を引きつらせる凛の、首筋から耳元に蟲が集う。
「とって、ねえ、とってよぉ! 桜ぁっ!」
「だいじょうぶだよ。はじめはかるく、ね。くすぐってあげる」
蟲が顔のすぐ前、一センチのところまで近寄ってきたのが恐ろしくて、凛は思わず目をつぶった。
ざわざわと、濡れた柔らかいものが凛の頬を行き来する。つめたくて、それがなめくじなどと同じ種類の生き物だということを、いやがうえにも連想させた。
「ひゃっ……あん!」
凛は気まずさにかあっと頬を赤らめた。どうしてかは分からないけれど、素っ頓狂な声をあげてしまった。それはおよそ場にそぐわないような、媚びを含んだ音色をしていた。
自分がとってもいけないことをしたような気がして、凛はぷるぷると子犬のように頭を振る。
「やだ、やだよぉ……」
蟲が、凛のくちびるをかすめた。どんなに顔を背けても、蟲はうぞぞと首の上をすべり、凛の向きをトレースしていく。
「ひあっ! あ、や、やぁ……」
蟲が耳朶に這いよった。かわいらしくちょこんとせりだした外耳を、たっぷりの粘液がしとどに濡らす。透明でつめたいしずくが、繊細なレリーフを思わせる耳のでこぼこを流れていく。ささやかな液体のねばりけが、血も凍る魔声に等しい激しさで凛の鼓膜をゆるがしていく。
ぞくぞくぞく、と、背筋に氷を落とし込まれたような感覚がした。
蟲が小暗いあぎとをぱくりとひらく。内臓色の暗紅が、凛の耳たぶに食らいつく。痛みはなかった。ただくすぐったさに身をよじった。
「ひゃあっ! あ、あははっ、やぁっ、きもちわるい! やだぁ!」
ちゅぷっ……ぞるっ……ぬぷぅっ……
それは動物の舌にも似ていた。言葉の代わりに愛を伝えようとでもいうのか、心胆を寒からしめるほど偏執狂的に、たてつづけの愛撫が加わっていく。
同時に、鎖骨のあたりを何者かがくすぐった。
圧をかけ、吸着する、柔らかな固体。針の先ほど細やかな繊毛が、さわさわと胸を這いずっている。
ぞわぞわと、正体不明のおぞ気が凛の身体を腐らせていく。
「やぁぅ……あっ……くぅ……」
虫が、その茸状の身体の最先端で、つんつん、と、凛の胸に接吻してみせる。布地を食い破られた裸の胸は、幼い娘特有の硬さで、ぷるり、と震えた。乳房とも呼べないような、ただ薄く脂肪と筋肉が乗っているだけの、指先が埋まるほどもない小さな胸だ。それでも多数の虫が群がって、上下左右からつつきまわせば、ふるふると淡いさざなみが立ち、あるかないかの揺れを形作る。
「ひッ……んんッ……あぁぁっ……!」
虫が皮膚の上をうねり来て、乳首に触れる。幼子のようなピンク色が、のけぞる身体に合わせて飛び跳ね、ぷるん、と全体を波打たせた。
ほとんどないようなおっぱいをぷるんぷるんと脈打たせて、凛は体をくねらせる。
「やっ……はぁんっ……あぁっ……」
何をかは知らず、もどかしいような心地がする。虫が胸の突起にむしゃぶりつくたび、凛の背筋は焼き鏝でも当てられたようにびくついた。ふるり、と、肋骨の上のあえかな肉付きが揺れ、横隔膜のあたりがぺこんとへこむ。
「やっ、さわんないでよぉっ、やだやだぁっ、はんン……」
びくっ! ……ぶるっ……! びくんっ……! ぶるぶるっ……
虫が胸を縦横に蹂躙していく。そのたびに、凛の体が異様なほど跳ねた。
性悦の萌芽が、凛の身体にあらわれようとしていた。
凛の気丈げな瞳が、とろりと隠微な膜をまとう。
「ん……んン……あぁっ……はぁっ……そっ……そんなに……もッ、しつこいッ……」
鈍った挙動で虫を退け、別の虫がさらに集ってくるのをかきわける。払っても払っても虫はあとから押し寄せてきて、凛の珊瑚粒のような乳首ばかりを執拗にくすぐった。
「ぅふぅ……んぁっ……もォっ、やぁだぁって、ばぁっ……! あぁっ、んンンッ、やーめーなーさーい、よーっ……」
凛がどれだけ虫を追い払っても、大量の虫がすぐに胸の頂に吸い付いてくる。粘液に濡れたその経口部が、ぢゅっ、くぷっ、ぴちゅっ、と、気泡まじりの甘い音をあげ、凛の乳首をいじくりまわす。
びく……っ、ビク、びくん!
「ひゃあぁん!」
胸の先端が、硬くなっていくのが分かった。充血してつやつやの桜色に輝くそれを、虫が間断なくねちねちといたぶっていく。刺激されればされるほど乳首ははっきりとそそり立ち、形がはっきりすればするほど、乳首は敏感になっていく。
「あァ……ッん……う……くっ、ふぅ……」
凛は切なげに眉を下げ、ぞくぞくと身体を震わせた。はじめて感じる、正体不明の恍惚感に、唇がだらしなく開かれる。
思わず唇に当てた指先の感触も、脳がとろけるかと思うほど気持ちいい。
自分で自分の唇をなぞるようにしながら、凛はいつしか虫が与える快楽に、夢中になっていった。
「んふぁっ……あっ……ふぅん………んうぅぅっ……」
凛の舌足らずな声が漏れる。視界に強烈なフィルターを噛ませられでもしたように、一気にぽわーっとなってしまう。
「きもち、いい? ねえさん」
氷のような桜の声。
凛はすこしだけはっとした。
「そんなっ、わけ、ないでしょっ……!」
(きもちいい……? これ、きもちいいってこと?)
未知の感覚にラベルを与えられ、凛ははっきりと自覚する。
(きもちいい、のかも……これ、もっと、したい……)
どろどろの甘い蜜が、凛の脳に直接流し込まれたようだった。虫が乳首をピンとはじき、たまらずあげた悲鳴が鼻の奥で甘く鳴る。虫がぴん、ぴん、と乳首を転がしていくたびに、凛の身体は切なく震えた。
ぴくっ……ぶるっ、びくん……
悦楽の振動が波紋のように身体を揺るがし、凛は手もなく感じてしまう。
(だ、ダメよ! 負けちゃダメなんだから……!)
凛はぶるぶると頭を振った。ツインテールがさらさらとなびき、凛の頭をすこしだけ冷静にする。
(敵の策に落ちてどうするの? ちゃんとがんばって、戦わないと!)
「間桐は裏切る気なの? 盟約を思い出しなさい! 今すぐ虫をひいて、私を解放するのよ!」
「……ふぅん。まだげんきなのね。ねえさん」
桜は腕をまっすぐに上げる。呼応するように、虫がいっせいに頭を上げる。
「ひっ……!」
「もう少しだけあそんであげるね」
追記 今回から記事を少しずつ分割します
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